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第80話 佐伯の生い立ち

last update Date de publication: 2026-05-19 06:27:25

先に風呂を済ませた佐伯のあと、俺もシャワーを浴び、少し火照った身体のまま廊下へ出た。

髪を拭きながら、何気なくリビングの前まで来て、ドアノブに手を掛けた――その時だった。

「佐伯くん、本当にお盆にご実家に帰らなくてよかったの?」

母さんの声が、思ったよりもはっきりと耳に届いた。

その問いに、佐伯はすぐには答えなかった。

ほんの一瞬。だが確かに、言葉を選ぶための、深すぎる「空白」があった。

「……海外で生まれたので、そういう習慣が無くて」

その言葉を聞いた瞬間、俺はドアノブからそっと手を離した。

今まで、どうしても聞けなかったこと。佐伯の、家族の話。

俺はその場に留まり、ドア一枚隔てた向こう側に、そっと耳を澄ませた。

「まぁ、帰国子女なの?」

「はい。七歳までフランスで過ごしました」

――知らなかった。佐伯のことを、俺は分かっているつもりでいた。

普通に、俺と同じように、日本に生まれて日本で育ってきた人間なのだと、どこかで勝手に決めつけていた。

でも、それは全部、俺の都合のいい想像に過ぎなかったのだ。

「ご両親はどんなお仕事をされてたの?」

「父は、
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